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コロナ禍、土地価格の下落で相続税や贈与税など不動産価格への影響は(2020.06.25)

新型コロナウイルスは毎年公表される土地の価格「路線価」にも影響を与えそうです。
緊急事態宣言の中、テレワークを導入した会社の割合が、3月の24%から4月に63%と2.6倍に上昇しました。東京都の調査によると、その割合は大企業では45%から80%に、中小企業は25%から71%に、小規模企業は19%から54%に上昇(従業員30人以上の都内所在の企業約400社の調査)となっています。 企業はテレワークが機能することがわかり、働き方も変わり、都心部に集中していたオフィス利用の見直しを迫られることになるかも知れません。

未曽有の危機、新型コロナウイルスによる経済活動低迷の影響により地価が下落した場合を想定して、毎年国税庁が公表する路線価(主要道路に面する土地の1平方m当たり:1月1日時点)の減額修正出来る措置が検討されているようです。相続税や贈与税に関係する路線価を減額修正するのは、その不動産価格の実態とかけ離れた課税になることを避けることが目的です。

土地を相続する場合、その相続財産である土地は、相続が起きた年の路線価で評価します。 路線価は毎年国税庁が7月に公表し、この価格は毎年3月に国土交通省が公表する公示地価(1月1日時点)の8割となっています。相続税は相続が起きた日から、10カ月以内に申告し、納税しなければなりませんが、今年の路線価は、新型コロナウイルスの感染が拡大し始める前の1月1日現在の土地の価格が基礎となっていますので、おそらく2020年に相続が発生したケースの多くは、このままでは新型コロナウイルスの影響を受けていない路線価で土地の相続税評価をすることになってしまうのです。 新型コロナウイルスの終息が見えない中で、深刻な景気後退が不安視されており、不動産価格にも影響するのではないかと懸念されますが、地価が下落した場合には、相続税の土地評価額と時価に差が生じる可能性が出てきますので、今後相続税の申告を予定している方々は国の動向に注意が必要です。 その下落が大きい場合に、路線価>時価 にならないかが重要な問題になってきます。
※2018年に亡くなった方は約136万人ですが、その財産が相続税課税対象になったのは約11万6千人でした。また、相続財産のなかで一番多いのは土地で、全体の35%になります。

ライフプラン実現のため この機会に家計の見直しを 2020.05

「消費支出6%減― 5年ぶり大幅落ち込み3月」

今年のGW(今年はステイホームウイーク)後、総務省が5月8日に発表した3月の家計調査を伝える新聞の見出しです。2人以上世帯の消費支出は1世帯当たり292,214円で、実質(物価変動の影響を反映しない)、前年同月から6.0%減という大幅な落ち込みに。
コロナウイルス感染拡大対策・外出自粛の影響で、旅行費は83.2%減、3月の学校の一斉休校、企業のテレワーク体制導入により鉄道運賃など交通費は65.2%と大幅に減り、春3月、4月は本来なら卒業式、入学式のはずが、縮小、中止となり、企業の在宅勤務で衣類にかける費用も少なく26%減に、飲食業界への休業要請、外出自粛で外食費も32.6%の減少となりました。 そんな中、GW中の消費で支出が増えたものには、自宅での特別な食事「おうちごはん特別バージョン」ということでしょうか、一年前のこの時期の旅行や外食への支出に変わり、巣ごもり自宅での食事の支出は2倍の23.4%だったそうです。
初めて経験するこの自粛期間で私たちの生活も一変しましたが、この機会に自粛期間がもたらした消費行動について振り返ってみてはいかがでしょうか。
今のままの家計で夢や目標がかなうのか。
家計費のバランスを考える時、重要なことは貯蓄がなされているかと言うことです。 残ったら貯蓄にまわすのではなく、先取り貯蓄―まず貯蓄をして残りの金額で生活することを習慣づけることで貯蓄を確保することが出来ます。ライフプラン相談をされる方々は、家を買う、子供を教育する、豊かな老後をと、思い描くライフプラン実現のために資金計画をします。
必要なものneedsと欲しいものwantsは、人それぞれ違うもの。
お金を使わないことではなく、何にお金を使うのか-家計の消費志向(嗜好)や改善点をつかむ事が大切です。本来は変動費として支出削減を考える交際費・娯楽費などは、社交的な、行動的な家族なら、必要な支出になりますし、育ち盛り世代、食が楽しみな家庭では、食費に余裕を持つことで日々の満足感が得られるでしょう。

家計費を棚卸して、わがやの家計の傾向(特徴や主張、弱点など)を認識して家計費の適正配分を考えて見ましょう。その支出傾向が本人の(家族の)意志や希望によるものであると再確認できれば適正ですが、不本意であったり、明確な意図のない支出(使途不明金となる)が多い場合は、見直しが必要となります。

新型コロナ禍での、突然の私たちの生活スタイルの変化は、改めて日々の暮らしを見直す機会になりました。今のままの家計で夢や目標がかなうのか、今後の生活設計を実現させるために、 まだまだ続くコロナとの生活「新しいあたりまえ」の中で、わが家の消費行動について振り返ってみることは今後の家計管理にも大きく影響するものと思います。
また、家計費支出が適正かどうかを考える上で、その目安となるものに総務省の家計調査があります。 家計調査とは総務省が一定の統計上の抽出方法に基づいて選定された全国の約9千世帯を対象に、家計の収入や支出・貯蓄や負債などについて毎月行なう調査のことですが、その年齢別、収入別の平均収支は、毎月の生活費として支出されている平均値を表しており、それぞれの家族構成に近い支出内容を見ることで自分達のその適正配分を考える目安にもなります。(社会保険料、税など非消費支出は含まれない)家計費のバランスをグラフに記しましたので参考にしていただければ幸いです。
※家計調査報告2020.3月分
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr-q.pdf#page=16
※二人以上の世帯の1世帯当たりの消費支出は 292,214円 ⇒ 実質 6.0%の減少 ( 物価変動の影響を除く) 世帯人員2.96人 有業人員1.32人(世帯主の配偶者のうちの女の有業率40.2%)世帯主の年齢59.5歳 持ち家率85.7% (二人以上の世帯には「勤労者世帯」「無職世帯」の他、世帯主が個人経営者、法人経営者、自由業者などの世帯が含まれる)
※二人以上の世帯うち勤労者世帯(54.2%)の消費支出は 322,461円 ⇒ 実質 8.1%の減少 ( 〃  ) 世帯人員3.34人 有業人員1.78人(世帯主の配偶者のうちの女の有業率54.6%)世帯主の年齢49.7歳 持ち家率80.0% 二人以上の世帯うち勤労者世帯の実収入は 1世帯当たり 490,589 円  

75歳から高齢者・65歳は准高齢者」老年学会が提言。この機会にライフプランの見直しを (2017.01)

今年初めに、日本老年学会と日本老年医学会は、現在「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」
に引き上げるべきとの提言を国に対して行いました。これまで日本では、WHO加盟の世界の先進国と同様、65歳以上を高齢者としていますが、様々なデータから高齢者の心身の健康が5〜10年前に比べて5〜10歳は若返っている、知的機能の面でも現在の70代が、
10年前の60代に相当するというものです。2016年日本人の平均寿命は83.7歳。WHO統計によると女性が世界首位86.8歳・男性が6位80.5歳で、この20年間世界一の長寿国であること、又、いわゆる健康寿命が平均寿命同様に伸びていることも背景にあるのでしょう。
提言にある通リ、誰しも心身が健康である限り、社会の支え手として社会貢献をして、いきがいのある高齢期を過ごしたいと考えますが、一方で高齢者になり受給する社会保障給付への影響が出てこないかと不安も感じます。
政府はこの提言に対し「提言は医学的な観点から出されたもので、社会保障における年齢の見直しは慎重な議論が必要。」と発言していますが、労働人口の減少や世界のトップクラスと言える日本の高齢者への社会保障費が増加し続けているという今後の日本が抱える問題が背景に見えています。
日本の社会保障費は、2013年度110兆6,566円と過去最高の水準となりました。高齢者の社会保障費である年金保険給付・高齢者医療給付費・老人福祉サービス給付及び高年齢雇用給付費を合わせた額は75兆6,422億円にも及び、全体の社会保障費の68.4%を占め、今後も増加傾向にあります。高齢者の定義を75歳に引き上げることで、労働人口を増やし、消費経済を活性化させ、65歳から75歳は高齢者でないとなれば、高齢者の範囲が縮小し、高齢者関係社会保障費も軽減され、国の財政を大きく好転する施策になるでしょう。
然しながら、年金受給年齢が引き上げられた高齢者の生活はゆとりあるものではなくなるかも知れません。
(国立社会保障・人口問題研究所「社会保障給付費の推移」参照)

海外では、アメリカやドイツなど多くの先進国も日本と同様の問題に直面しており、年金の支給開始年齢を67歳に引き上げを検討するなど対策が議論されているようです。 もし高齢者の定義が75歳になったら老後の年金は?
もし年金受給年齢が75歳に引き上げられたとしたら、あるいは70歳に引き上げられたとしたら、老後生活を支える年金受給額の総額は少なくなり、90歳近くまで続く老後の生活費はいくらかかるのかを把握して、収支を押えておきたいものです。
総務省家計調査によると高齢夫婦世帯の支出は、基本生活費、交際費、教養娯楽費、交通、保険料などで、1カ月約28万円かかると出ていますが、生命保険文化センター意識調査によるゆとりある老後生活費は月35万円ともいいます。
65歳以上も現役時代と同じような思い通リの稼働所得を得ることが出来るのかによって、収入と支出のバランスは変わってきますが、基本的には、月28万円の生活費が平均寿命の84歳まで19年間(女性は87歳まで)かかるとして6,384万円が必要な生活資金になります。
一方で、高齢者の定義の引き上げに伴い、もし年金受給年齢が75歳になってしまったとしたら、月22万円の年金(厚労省のモデル世帯の年金額)を受給できるまで10年間の不足分を補うことを考えてゆく必要があります。
国民生活基礎調査によると、高齢者世帯における「公的年金・恩給」は、総所得の67.6%にもなり、「稼働所得」は18.3%ですが、年金以外の所得を増やす、あるいは稼働所得率を上げる工夫をするなど、高齢期に突入するまでに、何かしらの手当てがますます必要になってくるでしょう。
高齢者世帯の所得の種類別1世帯当たり平均所得金額 (国民生活基礎調査平成26年)

また、同調査での約7割の高齢者世帯において公的年金等の所得が総所得に占める割合が80%以上になっている現状も踏まえ、65歳以降準高齢期の働き方や、生活の仕方を見直すことで、年金以外の収入の確保や、心身ともにゆとりある生活を送るための必要な支出を考える機会になればと思います。今回の提言を前向きなものとしてとらえ、この機会に65歳以降のライフプランの見直しをしておきたい ものです。

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